クレイジー・シンドローム










アイシテ、アイシテ


どんなに歪んでいても、狂っていてもいい。狂う程想ってくれるなんて、素敵なことじゃないか。




だから、アイシテ。僕を、アイシテください ────








三日月が美しく、奇しく揺らめく宵の頃。日沈んで尚…否、日沈んでからこそ艶やかに賑わう遊街には白い肌を見せ付ける少女や白い肌を更に白く塗りたくる女の色めいた声、商売上手な男達の卑猥な誘い文句が飛び交っている。
そんな淫猥な街角の一角 ──金持ちばかりが集まるような、そんな場所に一種の性癖を持つ客を迎えるための店が設けられている。その店の商品となるのは、下は一桁から上は十も後半の少年達。所謂、少年趣味な金持ち達が集い春を堪能していく店の一つなのだ。
店に来る者は皆同性愛者やバイ、または激しい性癖に耐え切れない女の代わりを求めて来る者ばかり。だからといって商品とされる少年達までその様な趣味があるというわけではなく…売られてきた者や騙された者、時には法に触れる様な手段を持ってこの店へと閉じ込められた者も居る。


そんな中他の者とは違う雰囲気を醸し出す少年が商品として訪れ、他の少年や周りの者は疎か、店の者をも驚愕させたのは記憶に新しい出来事であった。







少年の名はアレン・ウォーカー。この街とは結び付かぬ程に清らかな白い肌に銀灰色の右目。左目は包帯に阻まれ見えないが、それでも尚美しいと思わせるあどけなさを残した顔に華奢な身体。髪までが柔らかいミルキィ色で、一目見ただけで印象強く脳裏に焼き付く様な容姿をしている。仕草一つ取っても上品なのがまたこの街で見るには新鮮なもので、たちまち街中に少年の噂が出回ったのは言うまでもないであろう。



実は破産した貴族の子息、どこぞの国の元箱入り息子等。どれも突拍子もないもの尽くしだが、傷モノなのに対して高く扱われている少年を見たことがあるのは、まだ少数の金持ちのみなので、その特例な待遇をも踏まえて噂はどんどんと広まっていった。
そんな噂を耳にした人々は、金の有る者も無い者も皆一目見たさについつい格子へと近づこうと金を叩く。値段が値段なだけに、少年自身の客になる人間は数少ないけれども、彼が店に貢献しているのは見てわかる通りだと言える。そして、そんな噂に惹かれ野次馬根性でやってきた男がここにも一人。漆黒を纏うスーツに身を包み、シルクハットを深く被る男。褐色の肌に映えるトパーズの様な瞳を妖艶に煌めかせ、その男はゆったりとした足取りで妖しく照らされる店の中へと歩を進めていった。










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